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コッツウォルズの田園風景

 コッツウォルズでは、ウェスト・サンドの「ホリデー・ホーム」に滞在した。農家の建物を改造した民宿、いわゆるB&B(ベッド&ブレックファースト)である。真ん中にリビングルームとキッチン、両側にベッドルームが2室、それにバスルームである。料金は驚くほど安い。
 北側に小窓があって、外を覗くと牧場が見える。この写真は、前日まではムクムクと太っていた羊が、翌日、すっかり毛を刈られて痩せっぽちになった時のものである。近くにはベリーを栽培する畑があって、農家の人が作業をしていた。イギリスの人が好むのは、こういう風景なのであろう。

スノーヒルG

 ヒドコートが休園だった日に、門の前で日本人の庭園研究家に出会った。休み中のお客のいない時に、園内の写真撮影をするという。近くにどこか面白いところはないかと尋ねると、スノーヒルという丘陵地にラベンダーを栽培するところがあると教えてくれた。
 幸運なことに、今まさに花の真っ盛りであった。紫色の濃淡から白っぽい品種まで列植されていて、そのグラデーションが美しい。今回の旅行の中で、最も綺麗な写真が撮れた。アロマテラピーに使う精油(エッセンシャル・オイル)としては、ラベンダーが最も応用範囲が広いという

季節通信100コバノミツバツツジ

ヒドコート・マナーガーデン

 “ここだけは是非とも見てきなさいよ” と勧められた庭園がある。「ヒドコート・マナーガーデン」である。マナーハウスは、中世における荘園領主の館のことで、その庭のことをマナーガーデンという。ヒドコートは、チッピング・カムデンという町の郊外にある。英国を代表する庭園という。
 最初に訪れた日は定休日で、門は閉ざされ “ごめんなさい(WE ARE SORRY)” と記した看板が出ていた。しかし “是非” と言われている筋合いから、翌日に再訪問することとした。総面積10エイカー(約4ha)の敷地は直線や曲がった生垣により25の異なる庭園に分かれている。

ヒドコートG

 それぞれの庭園では、あらゆる造園的手法が駆使されている。高生垣やトピアリー(動物などを象った刈込み)、ツゲの刈込みで幾何学模様をつくる毛氈花壇、岩組に草花をあしらったロックガーデンなどもある。特に有名なのは、赤い葉や花を使った「レッドボーダー」である。
 庭園のはずれにヒツジが草を食む牧草地があった。実はこれも重要な庭園の要素で “ハハア” という。柵が見当たらないので、ヒツジがこちらへ入ってしまうのではと危惧するのは間違い。庭園との境には段差があってヒツジは侵入できないのである。この趣向にお客が “ハハア” と感心したところからこの名がついた。最後の写真は出口近くのトイレ、緑に包まれた美しいしつらえである。

子持ちカツラ

ハンプトンコート・フラワーショー

 ハンプトンコート宮殿は、ロンドンの南西、テムズ川の上流にある。電車で40分ほどと近く、川の畔に広大な敷地をもつ。元々は王宮であったが、現在は一般公開されて観光の名所になっている。毎年7月上旬に開催される「ハンプトンコート・フラワーショー」の会場でもある。
 今回の旅行を7月に選んだのは、夏休み前で格安チケットが得られることもあるが、この花の祭典が見たいこともあった。このイベントはチェルシー・フラワーショーに並ぶ最大級の園芸ショーで、英国だけでなく世界中から出展者と観客が参加する。

ハンプトンコートG

 あまりに広くて多彩なので、とても1日では回りきれない。大急ぎで概要を見るに留まってしまう。アウトドアでは庭園の展示、例えばミニチュア・ガーデンやキッチン・ガーデン(菜園)など。屋内ではバラの鉢植えや日本式盆栽、野菜(写真はトマト)の展示などがある。
 車やバスの利用者も多いが、電車でのお客も多い。私の乗った車内も満席で、駅からゾロゾロ列をつくって会場へ向かう。この日は最終日だったので、夕方になると庭園は解体され、植えてあった植物は販売される。お気に入りの草花を手に入れて、嬉しそうに会場を後にする人たちもいた。

プラント・ハンターの公園

 英国の田舎コッツウォルズには、独特の色合いの建物が多い。それは、この地方でしか採掘できない“蜂蜜色”の天然石「コッツウォルズ・ストーン」を使っているからである。路地裏から、賑やかな音が聞こえてくる。仕事が終わって、パブを楽しむ人たちの声である。
 広い通り沿いに蜂蜜色の石塀があって、狭い入口が開いている。誰でもが入れる公開緑地のようである。看板があってThe Ernest Wilson Gardenと記してあった。その時は、アーネスト・ウィルソン?どこかで聞いた名前だな、くらいにしか感じなかった。

ウィルソン株G

 日本へ帰ってから調べてみると、たいへん有名なプラント・ハンターであることが解った。アジアの植物を調べ、2000種をヨーロッパに紹介した人物である。日本では、屋久島で直径4mほどもある屋久杉の切株を発見した。「ウィルソン株」という名がついている。
 私は、50代と60代後半の2回「縄文杉」を見に屋久島に渡った。登り6時間、帰り5時間の登山はだんだんきつくなる。登山道沿いにあるウィルソン株の巨大さには、ただただ驚かされる。根株の内部が空洞になっているが、その広さたるや畳の部屋8畳以上であろう。小さな祠が祀られていた。

📎 太陽の恩恵

 今、環境問題を考えるとき、「カーボンニュートラル」 という言葉が非常に大切である。“人の活動は二酸化炭素 (C02) 排出を伴うが、それと同じ量の炭酸ガスを吸収する” という概念である。温室効果ガスであるCO2を削減しないと温暖化が進み、人類の滅亡にも繋がるという危機感がある。
 日本でも昨年 “2050年までに温室効果ガスの排出をゼロにする” “2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会を目指す” という方針が出された。まことに結構な政策であるが、問題はその方法と実践であろう。今後、具体的な方策が示されると思うので注目したい。

太陽の恩恵G

 上の図は 「光合成 (炭酸同化作用)」 を示した模式図です。小学校で勉強したと思いますがもう一度確認しておきましょう。植物の葉の葉緑素が、空気中の炭酸ガスと根から吸った水により、太陽光のエネルギーでデンプンなどをつくる作用です。酸素をつくり出すとともに気温も下げてくれます。
 敦賀の原発廃炉の土地に大規模な太陽光パネルを設置し、その電気を利用して水素ガスを発生させるという記事が載っていました。私は、小規模ながら屋根の上に太陽光発電機を設置し、電力会社に売電を行っています。7年で採算がペイできました。貯蓄効果とともに環境貢献でもあります。

太陽の恩恵H

季節通信101オオカンザクラ


📎 月を愛でる

 銀閣寺の本堂の前に、「向月台」と呼ぶ砂盛りと「銀沙灘(ぎんしゃだん)」という砂敷きがあります。その目的は、正面にある月待山に昇る月を観るためとも、月光を反射させて本堂を照らすためとも言われています。いずれにしろ、月を楽しむための装置に違いありません。
 銀閣寺(慈照寺)を造営した室町幕府第8代将軍・足利義政は、15世紀後半の室町中期から戦国初期に生きた人です。この時代は、公家に代って武士が台頭し、文化的にもその担い手になりました。現在でも日本の伝統文化とされる能・茶の湯・生け花などがその基盤を整えた時代です。

月G

 殺伐とした戦乱の一方で、風流を愛でたのでしょう。方丈から、庭に昇る月を眺めて楽しみました。秋ならば虫の声を聴いたかも知れません。それに比べて現代人は、ライトアップなど人工的な照明を得ることができましたが、淡い月の光の美しさを忘れてしまいました。
 言葉では「十五夜」「中秋の名月」「十三夜」「上弦の月」などと知ってはいますが、どんな月かは理解していませんでした。一度確認しようと百科事典で調べてみましたが、なかなか難しいものです。そこで、自分でその構造?を作図してみました。その成果が下の図です。ご覧ください。

月H

脱線“骨董市”

 日本の建築は木材によるが、西洋の建物は石やレンガを使用する。木材は腐るので、おおむね一世代で新しく建て直すが、石の建物は何世代にも亘って住み続ける。家具・調度についても、こちらは新しいものを尊重するが、あちらは古いものを大切にする。一般傾向の話しです。
 イギリスの田舎・コッツウォルズには、アンティーク・ショップがたくさんあると聞いたので、その一軒を覗いてみた。戸棚、ランプ、時計、食器など、あらゆるものが揃っている。木製品は張り物でなく、ムクの材木を使用しているので、何度でも削って新しくする。

骨董市G修正2

 ハンガリーからクロアチアへ向かう途中の公園で、露店の骨董市が開かれていた。壁掛けの銅製品や、壺・皿・フィギアなど陶製品も並んでいる。ひょっとしてマイセンやヘレンドといった掘り出し物はないかと探してみたが、鑑定する眼力がないので諦めることにした(「何でも鑑定団」のファンです)。
 ロンドンの大きな市場の一角にも、骨董店が並んでいた。BOUGHT&SOLDとあるので、買い取りもしてくれるのだろう。ひとつの店は古道具専門である。農器具・大工道具・文房具などが並べられていた。小さなノギスと植物観察用のルーペを買ってしまった。(店主も雰囲気がある)


季節通信95雪割草

木骨造りの家

 イギリスの人たちは、ロンドンなどの都会に住むよりも、郊外の田舎に住むことを好むという。もちろん仕事場は都心なので、通勤あるいは週末帰宅ができるくらいの近場であろう。ストラトフォード・アポン・エイボンは、ロンドンから直線距離にして120km、電車で約2時間である。
 この町は、文豪シェイクスピアの故郷として知られ、多くの観光客の訪れる町でもある。歴史は古く、アングロサクソン人の起源をもち、中世には商業都市として栄えていた。ストラトフォードという名は、古い英語でStreet(街道)とFord(川)を意味するという。

木骨造りの家G

 町を歩くと、古風な建物を目にする。「木骨造り」、英語ではTimber Framingという。木材による柱と梁で骨組みを造り、木組みの間に石材や煉瓦あるいは漆喰を詰め込んで壁にする。軸組と壁の両方で荷重を支えるのである。木材の描く模様が家ごとに個性的、大工の美的表現であろう。
 大きな木骨造りの前で、石垣の工事をしていた。へん平な石を横に積んでいく。アイルランドの畑で見たような隙間は造らない。一番上の石だけは、縦に尖った面を上にして積む。侵入防止のためだろうか。そこに小さな木や宿根草を植えて仕上がりである。古建築とよく調和する

📎 照葉樹林

 日本西南部に分布する「照葉樹の森」は、西に渡って朝鮮半島の先端部、中国の江南・雲南地域、さらにヒマラヤ山脈の中腹にまで連なっている。この森に生育する樹木は、葉の表面がテカテカ光るシイやタブ、カシやツバキなどである。

照葉樹林H

 この森には様々な民族が住んでいるが、その文化には多くの共通性があるという。日本では縄文時代人に当たるが、その特色は、餅や納豆といった粘つくものを食べ、麹の酒やお茶を飲み、絹や漆を使うことである。サトイモやコンニャクなどの根菜,ソバやアワなどの穀物を栽培する。

照葉樹J

 我が国では、古くから薪炭のための伐採や、スギ・ヒノキなどの植林が進んだために、現在では神社の境内などにしか残っていない。伊勢神宮では2千年の昔から、森厳を守り水源を涵養するために広大な天然林を残してきた。外宮では高倉山の90ha、内宮では神路山や島路山などの5500haである。名古屋市内では、熱田神宮や東谷山の北斜面、徳川園の緑地保全地区などでしか見ることができない。

 私事ですが、50数年前の三重大学林学科の卒業論文は、「外宮・高倉山の照葉樹林植生調査」でした。また、6年前、68歳の時に名工大で受講した修士課程の論文は、「外宮照葉樹林の景観調査」でした。

📎 森林の文明史

 文明が滅びるときには、ひとつのパターンがあるといいます。森林が無くなるのです。古代メソポタミア文明やインダス文明の崩壊などが当てはまります。そのプロセスは ・・・
①人口の増大 ②建築や燃料のために樹木を伐採する ③森林の破壊 ④気候の変動 ⑤食糧不足 ⑥疫病の蔓延 ⑦人口の減少・・・
というのが共通のパターンだそうです(安田喜憲著『気候変動の文明史』より)
 日本は森林国といわれ、国土の70%が森林に覆われています。平均気温15℃、年間降水量1500mmという恵まれた気象条件により、放っておいても豊かな森林が成立するのです。西日本ではシイやカシなどの照葉樹林、東日本はブナやナラといった落葉樹林です。

森林の文化史G

 それに比べ年間の降雨量が800mmほどのヨーロッパでは、放牧による草原化もあって、人が大切にしないと森林が育ちません。日本も、戦後に植林した造林地の手入れが悪い(間伐などが行われない)ため、森林の劣化が進んでいて安心はできないのです。
 今は亡き名優、森繁久弥さんの名前を思い出しました。“森が繁ると、文明が久しく弥(いや)栄える”と読めるではありませんか。今のコロナの流行が、「⑥疫病の蔓延」に当てはまらなければと願います。
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ブログを始めるに当って

 私ども「中部復建」は、戦後から一貫して土木施設の計画設計に携わってきました。地域の皆さんに、より身近に土木を感じて頂きたく先人が残してくれた土木遺産等を訪ね歩き≪中部の『土木文化』見てある記≫として、皆さんに紹介していきたいと思い、このブログを発信する事としました。  

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プロフィール

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Author:FC2USER480348EQK
森 田 高 尚
昭和21年6月 半田市生まれ
平成12年 東山植物園長
平成17年 名古屋市緑地部長
平成19年 中電ブルーボネット園長
平成24年 中部復建技術顧問
技術士:(建設部門・環境部門)
公園管理運営士 
著書:『園長さんのガーデンライフ』
監修:『世界一うつくしい植物園』
 (著者:木谷美咲)
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