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入鹿池と入鹿大橋

 入鹿池は周囲16km、面積152ha。人工の溜池としては我が国最大である。下流域の犬山市やその南の小牧市、西に位置する丹羽郡などへ灌漑している。五条川などいくつかの河川を堰き止める堤防は、高さ27m、延長120mの土堰堤である。斜面に「いるか池」の文字が描かれていた。
 入鹿池の歴史は、江戸時代初期に遡ることができる。木曽川の氾濫が人々を苦しめていたので、慶長14年(1609)、徳川家康は「御囲堤」と呼ばれる堤防を築いて治水を行ったのである。しかし、それまで田畑を潤していた何本かの支流が全て廃川になってしまった。
 そこで木曽川から取水する用水路を整備する必要が生じた。般若用水や大江用水(宮田用水)などが開削された。さらに、新田開発の行われていた丘陵地の高台に灌漑するために、この入鹿池が整備されたのである。

入鹿池

 「入鹿大橋」は、県道・春日井犬山線が、入鹿池に注ぐ五条川を跨ぐ橋である。昭和62年(1987)完成、長さ114m、型式はニールセン・アーチである。アーチ部分は真っ赤に塗られている。対岸の入鹿池の堤防から見ると、吊り下げのワイヤーは透き通って見えないので、まるで「赤い虹」のように見える。

入鹿大橋

季節通信170アセビ


新川橋

 県道50号は名古屋碧南線と呼ばれる主要地方道である。名古屋から大府、刈谷、高浜を経て碧南に至る。高浜市内では名鉄三河線と並行し、県道43号・岡崎碧南線とつながって大浜の港町まで続く。沿道には商店・西芳寺・藤井達吉近代美術館・九重味醂本社工場などが集積している。
 古くから重要な道路であったので、新川が開削された当時(宝永2年=1705)から橋が架けられていた。平成9年に改築された現在の橋の建設は、並々ならぬ力の入れようであった。有名建築家に設計を依頼して、個性的なデザインに仕上がっている。

新川橋G

 海へと漕ぎ出す「帆舟」の形のオブジェが橋を覆っている。赤い支柱に支えられた白いアーチをくぐるという珍しい橋である。歩道の手すりは波型になっていて、川に向かってデッキの役割を果たしている。支柱の根元には小さな「係船柱(ボラード)」があって「港」のイメージを強く演出している。
 新川は沿岸に発達した工場などへの海運の役割も担っていたという。現在も漁船などが係留されている。さらに、海に向かってプレジャーボートの基地がある。新川橋の上流には「衣浦マリーナ」、下流には「碧南マリーナ」がある。水面から釣り上げた船を補修するドックも備えられている。

新川橋H

季節通信161立体花壇


新川水門と新川樋門

 油ヶ淵は元々北浦と呼ばれる海の入り江だったが、慶長8年(1603)に幕府により新矢作川が開削されると、海から断ち切られて湖沼となってしまった。ところが出口の水路がなかったので、周辺の低地は水害に悩まされた。そのため、鷲塚方面を開削して「蜆川(ばいがわ)」をつくり新矢作川へ排水した。
 その後、この地域の新田開発が進んで蜆川だけの排水では足らなくなったので、宝永元年(1704)に新たに「新川」を開削して衣浦湾に流すようになった。それでも豪雨のときには冠水が発生するので、昭和10年に「高浜川」を整備して現在の形になっている。

新川水門G

 昭和34年の伊勢湾台風では、高浜川や新川を逆流した高潮により、油ヶ淵上流の長田川や半場川などが氾濫し大きな被害となった。そこで、昭和38年に高浜川・新川に水門や樋門を整備して洪水を防いでいる。新川を取材した。衣浦湾近くに「新川水門」、油ヶ淵近くに「新川樋門」がある。
 新川水門は5基の鋼製ゲートがあり、平常時は全開しているが洪水時には全部閉じられる。新川樋門の方は少し複雑な構造で、上下に動く「主ゲート」と水平に両開きする「マイターゲート」で構成されている。上流の水位が高いときには両方とも開いて排水する。海側の水位が高くなると、主ゲートは開いているがマイターゲートは閉じられる。洪水時には主ゲートも閉じられて、高潮の逆流を防ぐのである。

季節通信160子持ち桂


碧南の明石公園とスカイブリッジ

 碧南は矢作川の最下流部と衣浦湾に挟まれた台地・平地である。北部に県内唯一の天然湖・油ヶ淵(2018・9・7参照)がある。衣浦湾沿いには臨海工業地帯が立地し、産業道路的な国道247号と衣浦臨海鉄道が並行して走っている。南端には碧南火力発電所がある。
 名鉄三河線の終点・碧南駅や大浜地区周辺は古い港の町並みが残っている。大きなお寺や美術館、九重味醂の本社・工場もある(2014・2・13参照)。名鉄三河線で知立から30分、知多半島の半田からは衣浦トンネルを潜ってすぐ近くである。人口は約7万3000人。 

明石公園G

 油ヶ淵から流れ出る高浜川と新川に挟まれて遊園地機能を備えた明石公園がある。観覧車やメリーゴーランドなど料金は全て100円。大寒の最も寒い時期というのに、親子づれの何組かが来園していた。「サイクルモノレール」や「おとぎ列車・あかしのポッポちゃん」は一組だけの乗車でも稼働しており、優しい公園だと感じた。
 道路と線路の反対側に駐車場があり、渡るための人道橋が架かっている。「スカイブリッジ」という。アーチからワイヤーで吊る構造で「ニールセンローゼ橋」の一種であろう。コンクリート壁の外側に面白い模様が付いている。連続する飛鳥の姿がレリーフ(窪み)になっている。

碧南 再

季節通信163スノーフレーク


フォレストブリッジ

 「いのちの池」に架かる「フォレストブリッジ」は、健康の森の大動脈を構成している。「あいち健康プラザ」のアトリウムを抜けて階段を下ると橋があり、目線はガラス張りの「交流センター」へと向かう。交流センターの建物は、園路の幅だけ空間となっていて、そのまま西へ進むことになる。
 そこにはフォレスト最大の駐車場がある。車で来た人は、今の説明の反対のルートで歩くことになる。西側からプラザを眺めると、フォレストブリッジの先にアトリウムが聳え、個性的な橋と一体となって美しい建築景観を呈している。

橋G

 この橋の力学的構造は、アーチである。アーチからワイヤーによって橋面が吊り下げられている。両側のアーチの基部は近接しており。上へ行くほど開いている。この形がデザインの“みそ”であろう。真ん中の写真を見ていただくと解るように、橋を歩く人にとって非常に開放的な空間になっている。
 (正式に言うと「逆台形断面でV字に開いたアーチリブの中路式固定アーチ型ローゼ桁のデザイン」と言うらしい。)
 橋を下から見ると、太いアーチの鉄骨が力強く、安定感を感ずることができる。「いのちの池」に架かる橋であることを考え合わせると、頑健な背骨かあばら骨を連想してしまう。

橋H

あいち健康の森公園

 「あいち健康の森公園」は、“健康施設”と一体になって「森」を構成している。面積51.5ha、体育館・球技場・テニスコートなどの運動施設や、散歩コース・ジョギングコース・芝生広場など体を動かすことによる“健康増進”を意図する施設が整っている。
 プラザの西に「いのちの池」と呼ぶ大きな池がある。夏には一面にハスの花が咲くという。この周りを一周すると1150m、足に負担のかからない柔らかい舗装が施してある。冬季の今も、散歩する人やジョギングをする人が絶えなかった。

健康公園G

 池の北端に、白亜のデッキが張り出している。遠景に見える三角屋根の塔は「給水塔」、白くて高い塔はパラボラアンテナがあるところを見ると「防災無線」であろうか?その真下には駐車場があり、広大な園内で道に迷った時の目印「ランドマーク」にもなっている。
 公園の西端に「ふるさとの森」がある。ここには、全国47都道府県から選ばれた樹木が植えられている。「秋田:スギ」「石川:アテ」「宮崎:フェニックス」などである。近くには、薬になる植物やハーブを集めた「薬草園」、花菖蒲の品種を集めた「菖蒲田」などもある。

季節通信159フキのとう





宝橋と子どもの森

 国道155号と分岐して南へ走る道路を「健康の森線」と呼ぶ。なだらかに曲がりながら、樹林の中を走る快適な道である。私は年に3~4回半田へ行くためにこの道を通る。時には「げんきの郷」に立ち寄り、新鮮な野菜や魚を買うこともある。
 この道路を横断する歩道橋は、本園と東園とをつないでいる。「宝橋」といい「子どもの森架け橋」とも呼ぶ。長さ35m、白く塗装された斜張橋である。渡った先には「子どもの森」がある。全長120mものローラーすべり台や各種のコンビネーション遊具があって、子供も大人も一緒に楽しめるようになっている。

宝橋H

 東園には「ほたるの里」がある。樹林の中の水路を使って森岡自治区の「ホタル保存会」がボランティア活動として管理しているという。毎年6月に観察会を催している。私もかつて(50年前)東山植物園でホタルの飼育を経験しているので興味がある。一度見学してみたいと思う。

季節通信158ホテケノザ



あいち健康の森

 大府市は境川の最下流、衣浦湾入り江の付け根に位置する。面積約33平方キロ、人口約9万3000人の町である。中ほどに東海道本線と武豊線の交差する大府駅があり、北部には伊勢湾岸自動車道や名四国道が走る交通の要所でもある。
 市の南部に「健康」をテーマにした巨大な県営施設がある。「あいち健康の森」である。100haの広大な敷地は、「健康ゾーン」「運動ゾーン」「研究ゾーン」「生きがいゾーン」「福祉ゾーン」の5つゾーンに分かれている。その面積の半分・約50haは、都市公園としても位置付けられている。

健康プラザG

 その中心的施設として「あいち健康プラザ」がある。国内最先端の健康づくりの総合施設である。“健康がもたらす喜び・幸せ・楽しさ”を求めて「健康宿泊館」(63室の宿泊施設)、「健康科学館」(参加体験型展示室)、健康情報館(図書やネット)、「健康開発館」(コース別の教室)がある。
 建物は真ん中のアトリウムを中心に、左右に広がっている。アトリウムはガラスのドーム屋根に、壁面も全てガラス張りである。中には池もあり、熱帯植物も植えられている。アトリウムをくぐり抜けると西に向かって広い園路があり、ボランティア活動の拠点「交流センター」につながる。さらにその西側には、大府市経営の「JAあぐりタウン・げんきの郷」がある。とにかく広い。

季節通信155アスナロ


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ブログを始めるに当って

 私ども「中部復建」は、戦後から一貫して土木施設の計画設計に携わってきました。地域の皆さんに、より身近に土木を感じて頂きたく先人が残してくれた土木遺産等を訪ね歩き≪中部の『土木文化』見てある記≫として、皆さんに紹介していきたいと思い、このブログを発信する事としました。  

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プロフィール

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Author:FC2USER480348EQK
森 田 高 尚
昭和21年6月 半田市生まれ
平成12年 東山植物園長
平成17年 名古屋市緑地部長
平成19年 中電ブルーボネット園長
平成24年 中部復建技術顧問
技術士:(建設部門・環境部門)
公園管理運営士 
著書:『園長さんのガーデンライフ』
監修:『世界一うつくしい植物園』
 (著者:木谷美咲)
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