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長良川の美濃橋(再び)

 長良川に架かる「美濃橋」は、大正5年(1916)に完成した現存する最古の近代吊橋です。平成15年(2003)には国の重要文化財に指定されています。詳細については≪2017年9月23日≫にご紹介しましたので参照してください。
 今回再び取材したのは、この“老兵”が大手術を受け、再び若返ったからです。100年近く現役で働いてきて、ケーブルや補剛の桁が腐食するなど満身創痍の状態でした。10年前に修復に取り掛かった時の大命題は「構造形式や外観を出来るだけ残すこと」だったそうです。

美濃橋 旧

 特に右岸のアンカレイジ部のケーブルが劣化し、強度は70%に落ちていました。ケーブルは建設当時スウェーデンから輸入したものですので取り替えることなく現役で使い続けることとしました。広範囲で腐食が確認された「補剛桁」には修復の過程で新たな発見もあったそうです。
 ただ直すだけでなく、新たな魅力づくりにも工夫がなされました。夜間照明です。真っ白な「主塔」や真赤な「手すり」は青空の下で見ても美しいけれども、ライトを浴びた姿はさらに幻想的だそうです。修復を担当した技師は、上下流や近くのホテルで上からも見てほしいと話しています。

美濃橋 新

季節通信199門松


季節通信199「クリスマスのヒイラギ」

 クリスマスのイラストには、必ず緑の葉と赤い実の「ヒイラギ」が描かれます。これは「ホーリー」(西洋ヒイラギ)と言って、日本のヒイラギ(上右)とは異なるモチノキ科の植物です。日本で言うならモチノキ(下左)、葉にトゲはありませんが赤い実と緑の葉が似ています。

 ヨーロッパの冬は寒くて陽が短い。何せフランスなら北海道、イギリスではカラフト並みの緯度ですから。色の褪せた雑木林で、緑の葉と赤い実のホーリーはとても目立ち、心を和ませてくれる存在なのでしょう。東山の樹林でも、ソヨゴの実を見ると温かい気持ちになります。

ヒイラギ・クリスマス

板取川の松谷橋

 国道256号を地図で見ると、いやに曲がりくねっている。それもそのはず、蛇行の多い板取川に沿って走っているからである。板取川は、岐阜と福井の県境・両白山地を水源とし、美濃市あたりで長良川に合流する。
 北へ向かっていた256号が、大きく東へ曲がって郡上八幡へ向かうあたりの支流に「松谷橋」が架かっている。その新しい橋の一本奥に、いわば「旧松谷橋」が残っている。川幅が狭く、藪が繁っているので確認はできなかったが、この橋の型式は「RC方杖ラーメン構造」だという。

板取川マップ

 昭和9年に建設されているが、この時代のものとしては非常に珍しい構造だという。「方杖ラーメン橋」とは橋脚を斜めに配したラーメン橋で、深い谷など橋脚を立てられない場合などに用いられる。 上部構造の見かけの支間を小さくできるメリットがある。
 横から見た場合の美観に優れていて、鋼橋の採用事例が多い。以前ご紹介(2022・8・30)した名古屋城近くの「筋違橋」はまさにそれで、大変美しい橋である。
 下に模式図を添付します。

板取川G

季節通信198


寒狭川頭首工と寒狭橋

 寒狭川は、段戸山(1152m)を水源として南に流れ、長篠で宇連川と合流したのち豊川(とよがわ)と名を変え、豊橋に至って三河湾に注ぐ。合流地点の少し上流に「寒狭川頭首工」がある。ここで堰止めた水は、5.3kmの導水路を通って大野頭首工の上流に送られる。
 寒狭川の方が流域面積が広いので、豊富な雨水を宇連川に移して有効利用する仕組みになっている。寒狭川頭首工の完成は比較的新しく、平成9年である。型式はフィックスタイプ全可動堰で、ローラーゲートを2門もつ。毎秒1.3トンの水を取水することができる。

寒狭川マップ

 「寒狭橋」は、鳳来寺道と対岸とを結ぶ橋である。プラットトラスという型式で、鉛直材は圧縮で斜材は引張材として働く(ハウトラスはその反対)。ちなみに鳳来寺道とは、東海道を御油あたりで枝分かれして、鳳来寺を目指す道である。そのまま北上して足助・香嵐渓に至る。
 寒狭橋の建設年次は、県と市とのデータに齟齬がある。愛知県の台帳によれば昭和5年(1930)となっているが、新城市の資料では昭和39年(1964)と記されている。検証のしようがないが、本ブログの過去の掲載例(約120件)と比較すると、昭和5年ごろの橋と類似していると思う。

寒狭川G


豊川水系の水利用と大野頭首工

 東三河は大河川がないので、古くから水不足に悩んできた。そこで、天竜川や豊川(とよがわ)の水資源を高度に利用して、東三河だけでなく静岡県の湖西地域をも灌漑する総合開発事業(農業用水・上水・工業用水など)が実施されてきた。
 大野頭首工の現地に掲載されていた説明看板の模式図を見てみよう。天竜川の佐久間ダムや大入頭首工から導水路で宇連川に水を引き、いくつかの頭首工から用水路に水を供給する。下流域には松原用水・牟呂用水・西部幹線水路があり、東部幹線水路は渥美半島の先端までを潤している。

大野頭首工マップ

 大野頭首工は、宇連川の中流域にある。重力式コンクリートダムで、高さ26m・長さ66m・3門のゲートをもつ。東西幹線水路への導入を行う重要な施設で、昭和36年に完成した。右上の写真が導水路で幅員約7m、水深約3mである。取水口で、水質検査のための調査が行われていた。
 下流を見ると(下左の写真)、右岸側に小放流施設がある。これは魚道で、高低差21m・長さ147mの斜路である。10mごとに魚のための休憩用プールが設けられている。アユ・ウグイ・オイカワやカジカ・モズクガニなどが昇り降りするという。

大野頭首工G

桐谷の不動と渡し場跡(吊り橋)

 鳳来寺や秋葉山への祈りの道は、明治時代からは別所街道を北へ上る道であった。江戸時代には大野からそのまま右岸を北上し、桐谷で渡し船に乗って左岸へ渡っていた。古(いにしえ)は「大野桐谷の渡し」と呼び、現在は吊り橋に変わっている。
 「桐谷」というのは、今から600年の昔、この谷に桐の大木があったという逸話から名付けられた。「桐の大木の洞には鳳凰が住んでおり、仙人がその鳥に乗って鳳来寺との間を行き来した」という。大野宿の人々は、この聖地に道中の安全を願って「不動明王」を祀ったのである。

桐谷G

 旅人が舟を降りると、そこには「不道明王の祠」があり、近くに「不動滝」が落ちている。合わせて見ると一幅の山水画を見るようである。つづれ折りの杣道を登ると再び街道に戻る、人々は、そのまま北へ進んで秋葉山を目指すか、少し戻って大野宿に宿泊したかも知れない。
 このコースは、現在「東海自然歩道」に指定されている。新城山間部のこの辺りでは、「阿寺の七滝」「鳳来寺」「四谷の千枚田」といった観光名所をつなぐ一本道である。広域的には、東京「高尾国定公園」から大阪「箕面国定公園」を結ぶ総延長1690kmにもおよぶハイキング道である。

季節通信197東海自然歩道



旧大野橋と旧大野小学校

◆少しお休みをいただいたので、投稿に間ができてしまいました。寒くなって取材ができないけれど、 写真のストックはありますので更新を続けます。◆

 二代目の大野橋は、大野駅の開設された年の翌年・昭和13年に架橋された。菅原神社のある天神山の山裾に、旧大野橋の銘板が残されている。石柱3本と当時の写真をプレートにして記念碑としている。写真を見ると、確かに吊り橋であったことと、車の通れる幅員があったことが見てとれる。
 大野駅・大野橋・大野宿鳳来館と歩き、その直線上の坂道を登ると東洋小学校に至る。小学校のグラウンドの横に駐車場があり、その入り口の門として使われているのは、旧大野橋の親柱である。モルタルが剥がれてコンクリートがむき出しになっている。古いものを大切に保存する町だと思う。

大野小学校G

 新城市立東陽小学校は坂の上にある。前身は明治期に開校した大野小学校である。この高台には臨済宗方広寺の末寺「永明庵」があったが、明治初年に廃寺となった。眺望の良いこの跡地には、崇高な教育の場にしようとの考えから小学校が開設されたのである。
 校舎の前面に大きなカヤノキが聳えている。これは永明庵の境内にあったもので、今は学校の誇り高きシンボルとして親しまれている。カヤノキの根元には、石造の「二宮金次郎像」が据えられている。これも「古いものを大切にする」土地柄であろうか。

大野小学校H

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ブログを始めるに当って

 私ども「中部復建」は、戦後から一貫して土木施設の計画設計に携わってきました。地域の皆さんに、より身近に土木を感じて頂きたく先人が残してくれた土木遺産等を訪ね歩き≪中部の『土木文化』見てある記≫として、皆さんに紹介していきたいと思い、このブログを発信する事としました。  

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建設・補償コンサルタント

プロフィール

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Author:FC2USER480348EQK
森 田 高 尚
昭和21年6月 半田市生まれ
平成12年 東山植物園長
平成17年 名古屋市緑地部長
平成19年 中電ブルーボネット園長
平成24年 中部復建技術顧問
技術士:(建設部門・環境部門)
公園管理運営士 
著書:『園長さんのガーデンライフ』
監修:『世界一うつくしい植物園』
 (著者:木谷美咲)
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