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ぼう僧川水門と野鳥観察小屋

ぼう僧川下流域は、かつての氾濫原や低平地が広がっている。しかし昭和50年以降、周辺部のベッドタウンとして宅地開発が急速に進んできた。静岡県の太平洋沿岸は、東海沖地震あるいは南海トラフ大地震の際には高い津波が予測されており、大きな被害が出ることが恐れられている。
昭和54年から(1979)この地域の津波対策が進められ、平成9年に「ぼう僧川水門」が建設された。水門の型式は「鋼製シェル構造スライドゲート(巻上時ローラー)」という。6門のゲートがあり、それぞれにガラス張りの操作室が備えられている。
 
水門G

 上流側は道路になっていて、操作タワーごとに管理用の鉄の扉が付いている。この入口は洪水時の避難通路を兼ねている。扉の中にはラセン階段があり、避難者は屋上まで登るのである。広場にも看板が立っていて、避難方法が分かりやすく示してある。
 水門周辺は公園になっていて、ハマボウの群落があることは先回ご報告した。その中心地に木造の高床式建物が建っている、これは「野鳥観察小屋」で、水面や中洲に生息する野鳥を観察することができる。カワウを始め、ヒドリガモやカンムリカイツブリ、ユリカモメなどを見ることができる。

水門H

季節通信210カゴノキ


はまぼう橋

 天竜川の東10kmほどのところに太田川が流れている。その河口近くに「ぼう僧川」という二級河川が合流している。磐田あたりの三角州の水を集める川で、延長は13kmほどである。流域の気温は年平均16~17度と温暖である。
 太田川との合流地点から1kmほど上流に「はまぼう橋」という自転車専用の橋が架かっている。丸パイプによるアーチ橋であるが、吊り材のワイヤーがななめになっている「ニールセンローゼ橋」という型式である。浜名湖御前崎自転車道の一環で、そのまま堤防沿いに走って北へと進む。

はまぼうマップ

 橋名の「はまぼう」は植物の名前で、ハイビスカスの仲間である。関東以西の温かい海岸に分布する。ぼう僧川の両岸に、約150本が自生している。遠州灘では唯一の群落であり、「静岡県の自然百選」に選ばれている。夏に、フヨウやワタに似た形の黄色い花を咲かせる。
 水門近くの公園には「野鳥観察小屋」があるが、そのまわりに40本ほどのハマボウが植えられている。これは水門整備の折に、高校生たちが移植したものである。河川堤防の近くに樹高5mほどに育っていて、樹林内を歩ける小道もある、今回の取材は冬だったので、果実しか見られなかった。

はまぼうG

季節通信213カタクリ


浜松御前崎自転車道の「掛塚橋」

 静岡県の海岸沿いに4つのサイクリングロードがある。西から ①浜名湖周遊自転車道 ②浜松・御前崎自転車道 ③静岡・御前崎自転車道 ④静岡・清水自転車道である。合計の距離は約200kmと長い。今後、伊豆半島地区での整備も進めていく。
 浜松からは、磐田・袋井・掛川を通って御前崎へ至る。天竜川の、河口から2番目に「掛塚橋」が架かっている。延長は約900m、トラス橋であるが一定の距離に「山」がある。構造上に意味があるのか、単にデザインなのかも知れない。昭和30年(1955)に開通した。

サイクリングマップ

 当初は有料道路であったが、15年後に無料開放されている。幅員が狭く二車線しかないので、歩行者や自転車の通行はできなかった。現在は上流脇に自転車道が添架されて、サイクリングロードに指定されている。
 この橋を一目見た時から「これは亀崎の衣浦大橋にそっくりだ」(2013・4・9&2020・12・7参照)と感じた。写真を比較すればお分かりのように、間違いなく同じ設計・デザインであることは一目瞭然である。完成は昭和31年、スタート時に有料であったことも同じである。

掛塚橋G

猪鼻湖神社と瀬戸橋

 浜名湖は、全国で10番目の面積をもつ。しかし形が複雑なので、外周の距離は3番目に長い。それは4つの枝湾をもつからである。細江湖・松見湖・庄内湖・猪鼻湖である。1498年の明応地震のときに、砂州が決壊して海と繋がったので、汽水湖となった。魚など生物が豊富に生息する。
 猪鼻湖は北西に位置する。水深は深く、最深部では16mもある。湖面ではカキの養殖が、西岸ではミカンの栽培が盛んである。大きく突き出した大崎半島と本城山との間に狭い「猪鼻瀬戸」があり、二本の橋が架かっている。瀬戸橋と新瀬戸橋である。

猪鼻マップ

 半島の先端は「猪鼻(いのはな)」と呼ばれて岩盤が剥き出しになっている。ここには猿田彦命を祀る「猪鼻湖神社」が鎮座している。細い岩場の参道を進むとコンクリート製の鳥居があり、さらに進むと赤い太鼓橋がある。岩の隙間に根を伸ばした松の木の間に社殿があった。
 西の本城山と東の大崎半島を結ぶのは新旧の瀬戸橋である。旧瀬戸橋は昭和30年(1955)に完成、長さ137mの吊り橋である。幅員が狭くて一車線しかないので、信号により交互に通行する。巨大なコンクリートの固まり・アンカーレージが民家の庭先にあるので驚いた。

猪鼻G

季節通信209ユキヤナギ

桶狭間の戦い「祐福寺」と「沓掛城」

 NHK大河ドラマ「どうする家康」も佳境に入ってきました。私の家の近くに、桶狭間のときに義元が本陣を構えたと言われる史跡が2か所あるので訪ねてみました。ひとつは東郷町の祐福寺、もう一つは豊明市の沓掛城です。いずれも義元が討たれた前日に宿泊した所となっています。
 祐福寺には、後奈良天皇から勅使が遣わされたとき(大永8年=1528)に造営した「勅使門」が残っています。二階が鐘楼となっている山門には木彫の仁王が立っています。阿弥陀堂の横に立札があって「永禄3年5月18日 今川義元公本陣跡」と記されています。

祐福寺G2

 沓掛城は祐福寺の南約2km、豊明高校のすぐ近くにあります。現在は公園となっていて、昔の「城址」の姿をよく留めています。入り口に案内看板が立っていて、本丸・二ノ丸・堀や土塁・侍屋敷の位置などが記してあります。隣の慈光寺というお寺も、当時はお城の敷地だったようです。

沓掛城G2

 これまでに「大高城」や「義元終焉の地」などをブログとして掲載してきましたが、「桶狭間の戦い」の全体像をマップにしてみました。永禄3年の当日、信長や義元がどのような動きをしたかが一目で分かると思います。

桶狭間関連図

佐鳴湖

 三方ヶ原の南端にはいくつかの谷筋があり、その一つに佐鳴湖が入り込んでいる。太古には海と繋がっていたが、2000年ほど前に切り離され自然湖となった。しかし今でも、満潮になると海水が流入して汽水状態になるという。
 南北に約2km・東西に500mほど、周囲5.5km・面積約1.1平方キロの湖である。ひところは生活排水や事業排水が流れ込み、日本で最も汚染された湖であった。近年は改良が進み、第1位の汚名は返上されている。

佐鳴湖G

 佐鳴湖からは2本の川が流れ出し、浜名湖へと放流される。「旧新川」の流れ出し口には「富士見水門」があって、水の流出・流入をコントロールしている。二段式のローラーゲートで平成14年に完成した。もう1本の「新川放水路」は、平成12年に完成している。
 湖の西側の台地には大平台という団地がある。湖との間の河岸段丘の樹林は「佐鳴湖公園」として整備されている。団地からは「大平大橋」を渡って浜松方面へ行くことができる。「ローゼ橋」という形式のアーチ橋である。
 公園の南端に「佐鳴湖漕艇場」がある。昭和34年の国体ではボート競技の会場となった。この日は、中学生が練習のために集まっていた。
 佐鳴湖H

季節通信208シデコブシ


都田テクノポリスと総合公園

 「三方ヶ原」と聞くと、徳川家康を思い浮かべる。武田の大軍に蹴散らされて、家康も命からがら浜松城に逃げ帰ったという戦いである。武田軍は諏訪を回って秋葉街道を南下し、二俣城を落とした。家康は浜松城で籠城戦に臨もうとしたところ、武田軍は素通りして浜名湖の堀江城へと進軍した。
 武田・徳川の戦いは三方ヶ原で繰り広げられた。この台地は、天竜川と都田川に囲まれた三角形の洪積層台地である。東西10km×南北15kmほどの広さで、標高は25m~110mである。江戸時代は荒れた土地で採草地に過ぎなかったが、明治になって水が引けるとお茶などの畑になった。

三方ヶ原 最終 大

 昭和59年(1984)に、「浜松地区テクノポリス」開発計画が認められると、台地の西北の都田地区が中核拠点として選ばれた。平成3年までに造成工事が行われ、現在ではいくつかの企業や工業技術センター・静岡大学イノベーションセンターなどの研究機関が事業を進めている。
 総面積243haの内訳は、企業用地100ha・住宅用地42ha・公共用地(道路や公園など)101haである。地区の中央に「都田総合公園」がある。広い芝生広場や桜・ツツジなどの樹林がある。道路を跨ぐシンボリックな「北都橋」や、溜池に架かる「増沢の吊り橋」などもある。

三方ヶ原G

三方ヶ原H

 



都田川ダム(いなさ湖)と「おしどり橋」

 都田川は・愛知県との県境にある鳶巣山(とびのすやま)に端を発し、浜松辺りを流れて浜名湖に注ぐ。全長32kmの中河川である。上流部は急峻、中下流部は幅が狭くかつ蛇行しているので、古くから洪水の被害をもたらす河川であった。
 昭和45年から16年もの年月と127億円の巨費をかけて、洪水防止・農業用水・上水のための多目的ダムが建設された。「都田川ダム」である。高さ55m、長さ170mのコア型ロックフィルダムで滞水面積74ha、総貯水量は1200万トンである。

いなさ湖G

 ダムの完成した昭和61年には、地域の発展の願いを込めて「いなさ湖」と命名された。都田川下流域には水田やミカン園などの畑地が広がり、龍潭寺などの観光地もある。洪水の心配がなくなり、用水のもたらす恩恵にも浴している。
 いなさ湖の中ほどに小さな島がある。ダムにより水没する前は、尾根の一部だった。鬱蒼と茂る森林がそのまま公園になっていて、遊歩道だけが整備されている。島に渡るのに吊り橋が架かっている。「おしどり橋」、長さ36mで幅は1.5mである。カモやオシドリなど渡り鳥が飛来するのであろう。

いなさ湖マップ

静岡県立森林公園と「空の散歩道」

 静岡県立森林公園は、浜名湖の北・天竜川の右岸・新東名高速道路沿いにある。浜北インターチェンジからが近い。この辺りはいくつかのゴルフコースがあるように、自然豊かな森林地帯である。公園内には天然のアカマツの美林がある。
 植物は1000種類以上、野鳥も約80種類、数多くの昆虫も生息して、四季の変化を楽しませてくれる。散策・アスレチック・デイキャンプなどもできる。木工体験館には、「日曜大工」や「DIY」など、自分で作って楽しもうと志す人々が集まってくる。とにかく森と木を楽しむ公園である。

静岡県立森林公園マップ

 二つの尾根を結ぶ吊り橋があった。「空の散歩道」と名付けられている。長さは150m、谷底の水面からの高さは約50mである。眼下にアカマツなどの森が見える。谷間の向うには、遠くに浜松の町並みを望むことができる。眺望が良い。
 20年ほど前に、熱帯雨林を見るためにボルネオへ行ったことがある。食虫植物の「ネペンテス」や世界で一番大きな花「ラフレシア」を見ることができた。そこで「キャノピーウォーク」を渡ったことがある。背の高い樹林の中を縫って歩く吊り橋だが、「空の散歩道」も少し似た体験ができる。

季節通信36桃の節句


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ブログを始めるに当って

 私ども「中部復建」は、戦後から一貫して土木施設の計画設計に携わってきました。地域の皆さんに、より身近に土木を感じて頂きたく先人が残してくれた土木遺産等を訪ね歩き≪中部の『土木文化』見てある記≫として、皆さんに紹介していきたいと思い、このブログを発信する事としました。  

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プロフィール

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Author:FC2USER480348EQK
森 田 高 尚
昭和21年6月 半田市生まれ
平成12年 東山植物園長
平成17年 名古屋市緑地部長
平成19年 中電ブルーボネット園長
平成24年 中部復建技術顧問
技術士:(建設部門・環境部門)
公園管理運営士 
著書:『園長さんのガーデンライフ』
監修:『世界一うつくしい植物園』
 (著者:木谷美咲)
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