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犬山頭首工・ライン大橋

 犬山城の少し下流に「堰」がある。「犬山頭首工ライン大橋」という。「頭首工」とは、河川から用水へ水を取り入れる低いダムのことを言う。この堰の前後は重要な交通路ともなっていて、下流側に車道(操作橋)、上流側に歩道(管理橋)が並行して走っている。延長は420mである。
 頭首工は、愛知県側の木津用水・宮田用水、岐阜県側の羽島用水へ取水するために建設された。完成は昭和37年(1962)である。頭首工には合計10基のゲートがある。用途は3種類ある。土砂吐2門・可動堰6門・魚道2門である。

犬山頭首工G

 3つの用水はそれぞれ古い歴史をもつ。古くは平安の昔から、濃尾平野を流れる小さな川を利用していた。江戸時代になって木曽川左岸に「御囲堤」ができると、小さな川は締め切られて木曽川からの取水ができなくなった。そのため堤防に杁(取水のための水門)を造り、用水に流して田を灌漑したのである。
 「宮田用水」は慶長3年(1608)に原型ができ、江南や一宮に水を引いた。「木津用水」は慶安元年(1648)に開削され、小牧や春日井を流れている。岐阜県側も水不足に苦しめられてきた。「羽島用水」は比較的新しく、完成は昭和7年(1932)である。3つの用水の延長は45km、付随する用水網を合計すると260kmにもなるという。犬山頭首工は3つの用水の合同取水のための堰である。

犬山頭首工マップ

季節通信143カイノキ

犬山城崖下の橋と隧道

 犬山城は、木曽川から切り立った崖の上に聳えている。船で着岸して攻めようにも、鎧兜を着て崖を登ることは不可能であろう。そのような崖を切り裂いて、昭和4年(1929)に観光のための道路が造られた。城の東には、濠を兼ねた郷瀬川が流れている。その河口部に「彩雲橋」が架けられた。
 岩盤をコンクリートで補足しながら橋台と橋脚を築く。鉄材は、鉄道のレールを利用している。2連のアーチ橋、緑色に塗装された瀟洒なデザインである。橋上を走っていると、手すりがコンクリート製なので、ごく平凡な橋にしか見えない。しかし下から眺めると、3mほどの滝とともに一服の絵画のようである。今年、土木学会選奨の土木遺産に認定された。

犬山の橋G

 一方通行の狭い道を西に進むとトンネルがある。長さ20mほど、幅も高さも2.5mほどと小さな「隧道」であるが、何と手掘りで穿ったものである。トンネルの壁はモルタルなどが塗られておらず、岩盤が剥き出しである。ここの地層はチャートと呼ばれる堆積岩であり、その褶曲を見ることができる。
 このトンネルは、道路開通のために掘ったものではなく、名古屋市が木曽川から水道を引くため造った取水口を管理するために穿ったものである(大正3年完成)。現在は使われていないが、水門のローラーゲートが今も残されている(写真の矢印)。観光道路整備に当たり、この古いトンネルが利用されたのである。

犬山隧道GG

季節通信142スズランノキ

犬山城の外堀

 犬山城外堀の発掘調査が行われている。場所は大手門と城下町の境界辺りである。見つかった外堀の幅は17.5m、深さは6.5m。水のない空堀で、石垣を造らない素掘りであったことも判明した。これは、江戸時代に描かれた絵図やその記載とほぼ一致しているという。
 木曽川左岸に位置する犬山は、尾張と美濃の国堺に当たり、交通上・軍事上の要衝であった。それ以前から城があったが、現在の位置に建てられたのは文禄4年(1595)のことである。江戸時代になって、家康の9男・義直が尾張藩主となるとその御付家老・成瀬氏が入城することとなった。

犬山城マップの最終版

 明治になって廃城となり、門などは撤去され堀は埋められてしまった。しかし天守は保存され、国宝指定された5城のひとつに数えられている。ちなみに他の4城は、姫路城・松本城・彦根城・松江城である。残念ながら、戦前に真っ先に国宝指定された名古屋城は、戦災で焼けてしまった。
 犬山城は、つい最近まで個人所有であったことでも有名である。平成16年に公益社団法人に移管された。城の南一帯に並ぶ町屋は、今も古建築が残されている。現在、「伝統的建造物群保存地区」に指定すべく委員会を立ち上げて準備している。指定されれば、愛知県では足助、有松に次いで3番目となる。

季節通信136クチナシ


矢作ダム(奥矢作湖)

 もう一度、奥矢作揚水発電所の仕組みを見てもらおう(2021・10・12「揚水発電所」参照)。上池である「黒田貯水池」と下池の「矢作貯水池(奥矢作湖)」との落差は560mにも及ぶ。しかし、その直線距離はわずかに6kmである。1km当たり約100mの下降という急勾配である。
 この地形に目を付けて、揚水発電所を企図した眼力に敬意を表したい。黒田ダムの完成は、昭和8年(1933)であるが、それを2倍に増強して「揚水発電所」にしたのは昭和55年(1980)である。黒田発電所の出力は3100kwだったが、現在は第一・第二発電所により約11000kwが発電される。

矢作ダムマップ最終

 矢作川は、三河地方にあっては豊川と並ぶ大河川である。茶臼山高原を水源とし、愛知・岐阜の県境を流れる。豊田・岡崎を経て西尾・碧南の境を三河湾に注ぐ。延長117km、流域面積1830k㎡の一級河川である。古くから下流域に、洪水という災害と利水という恩恵をもたらしてきた。
 矢作ダムは、昭和45年(1970)に完成した。高さ100m、長さ321mのアーチ式コンクリートダムである。洪水調整・不特定利水・かんがい・上水道・工業用水道・発電と6つの用途に使われる。周辺は景観が良く、「愛知高原国定公園」の一角を占めている。今年、完成50周年の節目を迎えた。

矢作ダムG

季節通信140コスモス

④前橋

 今も使用されている橋が1つあった。「前橋」という。「どんぐりの湯」から国道153号をさらに北へ進み、長野との県境・大野瀬トンネルの手前にある。現在の「新前橋」を渡ったすぐの左側に見ることができる。矢作川の支流・野入川に架かる橋である。大正8年に開通した。
 橋長約17m、幅員4mのRC開腹アーチ橋である。橋のたもとに木製の看板があって、そこに建設中の写真が掲げられている。足場に支えられた、まだ型枠の残るコンクリートアーチが写っている。橋台は、がっしりした石積みで出来ている。建設に携わった人たちも写っている。

前橋マップ

 看板には、映画「星めぐりの町」撮影の模様が説明してある。監督・黒土三男により、小林稔侍・荒井陽太・壇蜜などが出演している。各地の映画祭でグランプリを受賞した名作である。豊田市一帯でロケが行われたが、大野瀬町の「前橋」は、映画を象徴するシーンとして何度も登場するという。

前橋G

◆◆これで4つの橋の報告を終わります。共通して感じることは、100年以上の橋がよくぞ残されたとの思いです。新しい橋が完成すれば、古い橋は“御用済み”となり、撤去されたかもしれません。地域の人々の愛着があったのでしょう。今、豊田市が修繕を検討しています。映画撮影に使われたように、古い橋なりの活かされ方が見つかればいいと思います。◆◆

季節通信135ミズヒキ
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ブログを始めるに当って

 私ども「中部復建」は、戦後から一貫して土木施設の計画設計に携わってきました。地域の皆さんに、より身近に土木を感じて頂きたく先人が残してくれた土木遺産等を訪ね歩き≪中部の『土木文化』見てある記≫として、皆さんに紹介していきたいと思い、このブログを発信する事としました。  

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プロフィール

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森 田 高 尚
昭和21年6月 半田市生まれ
平成12年 東山植物園長
平成17年 名古屋市緑地部長
平成19年 中電ブルーボネット園長
平成24年 中部復建技術顧問
技術士:(建設部門・環境部門)
公園管理運営士 
著書:『園長さんのガーデンライフ』
監修:『世界一うつくしい植物園』
 (著者:木谷美咲)
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